小さき兄弟会総集会
ポルチウンクラ
 
(サンタ・マリア・デリ・アンジェリ)
2003・05・25−2003・06・21
(日本語版)

総長報告(第一部)
教皇メッセージ 総長報告 (0)  (1)  (2)  (3) 特別講演 総括文書  (1)  (2)  (3)

総長報告 第一部

 

 総会の指令(mandates)の実現

T.1997年の総会:記念から預言へ

  私たちは主によってフランシスカンとしての召命をいただき、同時にフランシスコ会のカリスマ的伝統の偉大さと豊かさを受け継ぎました。このカリスマ的伝統は世紀を越えて私たちに受け継がれてきたものですが、それは過去の様々な時代に生きた私たちの先輩の直感的で革新的な粘り強さのおかげなのです。 

 新しい千年紀の始めにあたり、私たち小さき兄弟は、この遺産を受け継ぐよう招いてくださった主に感謝しなければなりません。この豊かな霊的伝統は、現代に豊かな実りをもたらすべく私たちに託されたものであり、その責任は重大です。この伝統を受け継いだままの状態で保存するだけでは不十分です。私たちは、それを常に生き生きとした状態に保ち、現代の教会と世界に命を与えるものにしていかなければなりません。福音書のタレントのたとえ話は、受けた恵みをまじめに投資して豊かな実りを得ることがいかに大切か、さもなければすべてが奪われてしまうということを、私たちにはっきりと示しています。 

 1997年の総会の文書は「開かれた対話」open dialogue)を出発点として自分自身を刷新してゆくことを私たちに求めています。開かれた対話とは、次のようなものです。

     兄弟会と世界および異文化圏の人々との対話:これは私たちの召命と使命から生まれた不可欠の条件です。

     諸宗教間の対話とエキュメニカルな対話は、現代では特に必要なものです。

     希望のしるしとして、また、新しくてより大きな目標を目指す基盤としての、フランシスカン家族間および兄弟会内の対話。

  これらの対話のプロジェクトを実現するために、下記のことが要請されました。

     各組織のグローバルな見直し。これは各組織を、より活気と独創性にあふれた召命と宣教活動の歩みへと導くためです。

     徹底的な神への探求を目指す「しっかりした」養成(初期養成と生涯養成)

     喜んですべてのものを主に「返す」ために、手段や人材など、自分たちの持てるあらゆるものを兄弟間で分かち合うこと 

U.対話を促進するために:そのためのいくつかの手段  

 教会および世界は私たちに対話に対する真摯な姿勢を求めています。それは、私たちの証言の信頼性を高め、イエスの復活による和解のメッセージを「具現化」させるためです。1997年の総会が提案した手段とは以下のようなことです。

     対話のための奉仕部

     JPIC活動への参加

     コミュニケーションの強化 

対話のための奉仕部(n.7; Attachment.1)

  前の総理事会によって設置されたこの組織は、対話の三つの部門(エキュメニカル対話、諸宗教間の対話、諸文化間の対話)における奉仕の役割を日々一層明らかにしてゆくために、成長を続けなければなりません。対話に関して会の意識を高めるために真剣な努力が払われました。管区長協議会(コンフェレンス)は各管轄地域において、それぞれの実状にあった対話のための奉仕部設置の可能性について検討するよう要請されましたが、管区長協議会や管区をこの問題に引き入れることは容易なことではありませんでした。なぜなら、いずれも私たちの召命における対話の重要性と対話のための組織の必要性をあまり感じていないからです。難しいからといって私たちの召命と使命に不可欠の対話という側面を放棄すれば、事態はゆゆしいものになると思います。「対話とは愛の新しい名称である」とパウロ六世は言っておられましたが、これは私たちにとっても有効な言葉です。

 では、出会いとしての対話の文化をどのように作り上げることができるでしょうか。また、そのためにどのような組織を設置したらよいでしょうか。

 JPIC活動への参加(nn.8-10; 103; Att.2.)

  私たちの召命のこの重要な側面に対する意識が最近とみに高まってきているように思われます。総本部のJPIC担当室は組織を強化し、その役割を一層明確にしています。担当室は兄弟たちの活性化に真剣に取り組んできました(たとえば、会議、資料、ウェブ・サイト、連帯の提唱など)。しかしながら、兄弟として平和、正義、命、和解といった問題にいざ関与するとなると、まだ、ある種の「ためらい」があります。その上、進んでいく道は必ずしもはっきりしていないのです。確かに、問題は複雑ですし、必要な知恵がいつも授けられているとは限りません。・・・もしかしたら、それは私たちに関係のないことなのかもしれませんし、私たちの仕事ではないのかもしれません。しかし、会憲(9697参照)にも記されているように、これは教会が私たちに求めていることなのです。世界は今、かつてないほどに、和解と正義と平和のために働く聡明で「平和な」人々を必要としています。フランシスカン・カリスマは、私たちに「架け橋」となること、小さき兄弟として、また兄弟共同体として積極的に「未知」の領域に存在することを求めています。そのためには、恐らく、養成とコミュニケーションのニーズによりよく応える新しい管区組織が必要なのではないでしょうか。より確かな信念が必要なのは言うまでもありません。

 私たちの霊性の重要な側面であるJPICの活動を、兄弟たちの日常生活という綾の中に織り込んでいくにはどうすればよいでしょうか。 

コミュニケーションがなければ、交流も生まれない(nn.50; 197; Att.6)

  コミュニケーション担当室は新しい人材を得、より適切な技術手段と必要な財政援助を得たお陰で機能が一段と向上し、強化されました。

 10 この担当室は相互理解を深める上で非常に重要な道具となっており、様々な文書や引き続き体験していること、各管区で起こっている事柄などを互いに分かち合うことによって、交流と帰属意識を育てています。

 11 現在のところ、技術的には必要な手段がそろっています。足りないのは恐らく関わりを主とした意識ではないでしょうか。総本部の担当室が絶えず改善されなければならないことは言うまでもありませんが、各管区とのコミュニケーションを改善する方法を見つけることも必要です。では、管区本部や連絡担当者はどうでしょうか。 

12 コミュニケーションはダイナミックで相互的な交流であり、一方通行のものではありません。私たちのコミュニケーション能力は、総本部内に留まっている限り、兄弟間の対話を促進することもなく、不発に終わってしまう可能性があるのです。 

V.福音宣教の新しい形

 13 皆様ご承知のように、私たちは今日、福音を生きるその生き方を真剣に見直すように求められています。つまり、世界の歴史的、文化的変化を考慮しながら、福音を証しする方法、福音を他人に示し、伝えてゆく方法を見直すように求められているのです。1997年の総会は、創造的になって「福音宣教の新しい形」(MP 14)を試みるようにと私たちを招いています。この招きの意味するところは次のようなものです。 

     新しいことを始めること、つまり、新しい使徒職や宣教活動を「創り出す」こと。

     すでに行なわれていることを今日の重要なニーズに合わせることによって改革すること。

     生まれつつあるもの、成長しつつあるものを直感的に理解しながら、回心と告知という福音的な歩みへと統合すること。

     委託された小教区における自分の活動方法を見直し、それがフランシスカンとしてのアイデンティティーにふさわしいものになっているかどうか検証すること。

     神に「征服されて」回心し、情熱的になっている人を世界に送り出せるよう私たちの中で育成すること。

     私たちの進歩を阻むような障害物に出会ってもすばやく身を躱(かわ)せるような俊敏さを養うこと。

     「兄弟共同体の一員として」世に送られたことをカリスマ的に自覚すること。この態度は「自分個人の」使命だとか、「自分個人の」使徒職といった独断的で個人主義的な「自己管理」とは相いれないものです。

 14 多くの管区が私たちのカリスマにふさわしく、しかも現代のニーズに応えた新しい形の福音宣教を、勇気をもって積極的に試みています(小冊子「時のしるしから、しるしの時代へ」参照[日本語版準備中])。その他の管区は暗中模索といったところです。私は今までに多くの兄弟が旺盛な奉仕の精神を持ちながら、古いものと新しいものとを調和させることができずに悩んでいるのを見てきました。彼らは身に付いたものを何一つ捨てずに、新しいことを思い切ってやろうとしています。しかし、選択するということは、しばしば(何かを)放棄することを意味します。歴史の隅っこに置き去りにされたくなければ、あるいは、個々の教会で人員不足を補うだけの役割にとどまりたくなければ、そして、自分の召命や新しい召命を失いたくなければ、遅かれ早かれ放棄することが必要になります。また、ある兄弟たちは、極めて緊張した状態に置かれています。そうした緊張状態が挫折や召命の放棄につながらないように、また、福音の精神不在の日課を諦めと受身の気持ちで果たすようなことのないように、彼らのために主に祈らなければなりません。

 W.兄弟会内の対話と関係(nn.26-29)

 15 1997年総会の要請事項のいくつかは、総理事会または管区長に宛てられたものです。総理事会に宛てられた要請を以下に挙げてみましょう。

      高齢で病気の兄弟たちを励ますための活動を支援すること。(cf. 「手紙」1998年聖フランシスコの祝日、「今日のフランシスコ会」2000年)

     「混合修道会」(「奉献生活」61)としての私たちのアイデンティティーを認識し、回復するために奉献・使徒的生活会省(CICLSAL との対話を続けること。 

16 管区長に宛てられた要請は以下のようなものです。

      「世界をあまねくキリストの福音で満たすために」(H・シャロック)という文書を考慮にいれて、兄弟生活と福音化の計画を練り上げること。

     本会のアイデンティティーと兄弟間の平等を推進すること。

     メンタリティの変革(意識改革)を促進するような初期養成と生涯養成のプログラムを立案すること。特に召命のための司牧的関わりにおいて、本会を聖職者とブラザーの兄弟から成る兄弟共同体として示すと同時に、フランシスカン養成に主眼を置き(有期誓願期間中)、ブラザーの兄弟たちを福音宣教活動に参加させること。

17 その結果、フランシスカンの養成に関しては様々な管区で、少なくとも理論的には、かなりの成果がみられました。しかし、「メンタリティの変革(意識改革)」に関しては取り組みが今ひとつで、すべての兄弟たちを福音化計画、特に管区の福音化計画に参加させることが十分にできていません。 

18 各管区長協議会および各管区は現在直面しているいくつかの問題を検討するように要請されました。たとえば、 

     一人で暮らしている兄弟の状況

     個人主義

     行動主義(activism)と情緒的な問題(affective problems)。 

19 これまで私たちはどのようなことをしてきたでしょうか。多くの問題が残されており、それらは緊急課題となっています。これらの問題を再度取り上げる必要があります。 

X.物財の分かち合い(nn.40-45; 50-52; Att.5) 

20 分かち合いは兄弟的な対話を行動で表したものと言えます。それは人材や経済的な手段の面で協力しあうことです。ここ数年の間に連帯意識がとても成長しました。連帯意識とは、相互信頼と同じ共同体に属しているという感覚のことです。総本部にも連帯があります。連帯は総本部が調整機関として会に奉仕するために不可欠のものです(たとえば、海外宣教活動資金、養成のための基金、困っている管区への支援、ジュビリー基金など)。私にとって重要と思われることは(しかし、みんながそう思っているわけではありませんが)、人に与えるものが何もないほど貧しい(人材面、組織面、経済面などで)兄弟は誰もいないということです。この点で、もっと出来ることがあるように思います。 

Y.養成と学問(nn.30-39; Att.4) 

21 総理事たちは、前の総会の要請に応えようと努めてまいりました。次のようないくつかの重要な課題が管区長たちに委託されました。

     世俗の波に乗るか、歴史から取り残されるかという二つの極端に陥らないようにするために、しっかりした初期養成、および生涯養成を行うこと。

     人間として、キリスト者として霊的成長を促し、真の兄弟的な関係を築けるような養成を行うこと。

     福音宣教の使命の準備ができるような養成を行うこと(小教区での活動やその他のフランシスカンの司牧活動も含めて)。

各管区ではどのようなことが行われてきたでしょうか。 

省のために 

22 開かれた対話に向けての養成:私たちは多分自分の共同体や内部の問題に手一杯なのでしょうが、それでは宣教活動がおろそかになってしまいます。私たちは、現代人の抱える諸問題にもっと関心を向けて養成を行わなければなりません。現代の諸問題とは、たとえば次のようなものがあります。 

     大きな社会問題:暴力、社会的疎外、戦争、麻薬、難民、増加する貧困、踏みにじられた基本的人権、他者との率直な信頼関係を結ぶことの難しさ、エキュメニカル対話と諸宗教間の対話の難しさ、など。

     圧倒的な死の文化のあどけない犠牲者とならないために、社会構造について批判的に読みとる事が出来るような養成プログラムを取り入れるべきです。

     新しい命のしるしの見分け方を知り、そうしたしるしを情熱的な心で受け入れることのできる預言的な精神を養うこと。情熱的な心はリスクと希望を経て備わるものです。

     さらに、教会内の対話、すなわち、教会のすべての構成員や様々な教会活動に携わる人々、神を探し求めるすべての人々との対話を促進すること。

 23 管区の福音宣教計画:この種の計画の検討や実現を後回しにしてはなりません。これは「存亡の危機」を乗り越えるチャンスと、信仰と福音宣教への新しい旅を始めるチャンスを与えてくれるものです。この重要な問題について反省するための必要な組織を各管区は持っているでしょうか。 

24 対話と関係の文化:この文化をどのようにして作り上げることができるでしょうか。また、この文化を推進するために、どのような組織が必要でしょうか。 

JPIC担当室これについて話し合うための部署や責任者を各管区に設置する必要があります。会全体の連帯意識を高めるにはどうすればよいでしょうか。また、兄弟各人の「日常生活」に連帯感を植え付けるにはどうすればよいでしょうか。 

25 開発担当室(The Development Office)、海外宣教総事務局への支援、養成と学問のための基金:これらの計画に皆が参加することは、連帯と協力の具体的なしるしであり、すべての管区に求められていることです。本総会はこの兄弟的な分かち合いを再度促すべきだと私は思います。 

26 諸管区間、および国際レベルでの会議や集会の重要性:最近何度か開かれたこれらの会議について一言申し上げたいと思います。これらの会議は参加した兄弟個人にとっても、兄弟を派遣した管区にとっても非常に意味のある体験でした。一番の成果は、世界に広がる兄弟会としてのアイデンティティー、すなわち、相互理解と帰属意識(管区としての兄弟的絆を強めるような共同意識)の場をよりはっきり自覚できたことです。会議は常に刺激に満ち、希望を与えてくれます。なぜなら、それは私たちを自分の召命や使命により相応しく、より普遍的な方向に導いてくれるからです。養成とJPICに関しては、この分野に深く関わることの重要性が兄弟たちや各管区に示されたという意味で、大きな成果がありました。