最悪の状態(10月6日)

 

アンジェロ 春山 勝美 神父
Fr.Angelo Haruyama Katsumi, OFM
haruyama@netvision.net.il

 さて、メデイアで、イスラエルの混乱をご承知のことと思います。非常に残念なことです。これまでも、パレステイナの青年は折りあるごとに、イスラエル兵士に投石を繰り返していました。そして、今回のことの起こりは前政権政党の指導者が神殿の丘(イスラムはモスクと言います)を訪問したことにあります。訪問の意図は神殿の丘は決して手放さないとの意志表示です。訪問の計画が上がったときから、パレステイナ側はこのような訪問は認められないと言っていました。月末の28日、訪問を終えた直後、塔の上にいたイスラム青年が巡回のイスラエル兵に投石を始め、人の頭ほどの岩を投げつけたのが、一人の兵士に当たり、担架で運び出され、救急病院で手当を受ける事態となりました。塔の上の青年を逮捕すべく兵士たちいが攻め寄った時に、イスラエル側だけで、34人負傷しました。

 翌金曜日、昼の礼拝を終えた群衆が巡回中の兵士に投石したことからイスラエル兵がゴム弾を発射し、4人の死者を出す大衝突となりました。この衝突が今回の異常事態の発端です。そして、今回の特徴はイスラアエルーアラブ(イスラエル国籍を持つアラブ人)が投石事件を起こしていることです。ですから、これまでのパレステイナ暫定自治区ばかりでなく、イスラエル全土;ナザレ、アッコ、ジャッファ(テルアヴィブ)に広がりました。イスラエルの新聞は、暫定自治政府はコントロールを失ったと言っています。

 衝突は、むしろ戦闘は、ユダヤ教の聖地、イスラエル人入植地に駐屯するイスラエル兵に対する投石がきっかけですが、イスラエル軍の反撃に対して、暫定自治政府の警官が応戦するため、ロケット弾の使用や戦闘ヘリコップターを出撃させる事態に拡大しました。中東に平和はすべての人の願望ですが、現時点で無理です。ユダヤ教もイスラム教も宗教として共存、並存はあり得ません。同じ場所を、イスラエルが神殿に、また、イスラムがモスクにと使い分けることが出来るとは思えません。この問題を玉虫色にして、アラブ人に和平交渉の終着点、エルサレム旧市街を支配下に置くパレステイナ国家建設の夢をつのらせたアメリカ外交の失敗とみたいです。

 イスラエルが出来るぎりぎりの譲歩は旧市街の支配は続けるが(全世界のユダヤ人の悲願)、エルサレムの他の一部を返還すると言うことでしょう。アメリカはパレステイナ側にこの妥協案の受け入れを迫ったでしょうが、パレステイナ側は全イスラム教徒の立場に立って、モスクをイスラエルの支配下に置く妥協案には絶対に応じられなかったと思います。どうにもなりません。世界を見ても、イスラム教は他宗教と共存していません。共存できません。私たちキリスト教徒は日本の歴史に匹敵する長い間、1917年、オットマントルコが倒れるまで、イスラムの支配下のもとで、救いの業が行われたところ:聖墳墓教会が破壊されれば再建し、税の取り立てに耐え、巡礼の道を確保してきました。聖墳墓教会の管理権を取り戻してまだ100年になっていません。イスラムの支配下に入りたくないというイスラエル人の気持ちは理解できます。