一日で二杯

7月8日

アンジェロ 春山 勝美 神父
Fr.Angelo Haruyama Katsumi, OFM
haruyama@netvision.net.il

今度こそ、和平を実現して欲しい。これは聖地に心を寄せる世界の人たち願いです。

6月上旬、イスラエルの連続パレステイナ過激派指導者暗殺、パレステイナ過激派のエルサレム路線バスでの自爆テロ以後、暴力の応酬がなくなったわけではありませんが、世界のニュースになるほどのイスラエル・パレステイナの衝突はありませんでした。そして、最近では、ガザ北部、ベトレヘムからのイスラエル軍の撤退が報じられ、5日のBBC中東ブロック(電子版)ではベトレヘムの治安維持をイスラエル軍から引き継いだパレステイナ治安部隊の勇姿が連続写真で紹介されていました。

こんな折り、ベトレヘム・ベッサフールから来た信者に町の様子を聞いたところ、日に日に悪くなるとの返事でした。今日(イスラエル軍撤退後)、エルサレムに来るのに4ヶ所で検問を受けたと、あきらめ顔で言い返されました。

エルサレム新市街も変わりしました。終日歩行者天国のベン・エフダの最大のショッピングセンターがこの春、売り尽くしセールをしていました。インテイファダ(INTIFADA)が始まる前までは、家電フロアーにはソニー、パナソニック、ビクター等のテレビ、オーデイオ、ビデオカメラの日本製品が幅を利かせていました。NECのコンピュータも並んだときもありました。しかし、この数年、品数は少なくなり、また、韓国製品が目立つようになっていました。

歩行者天国では、レストランの店じまいが目に付きます。自爆テロを恐れて、外国人が寄りつかなくなったのが最大の原因と思います。7年前、エルサレムに来た当初、スペイン人の大学教授に招待されて入った店があります。この店はコシェルでないので、肉が美味しいとのことでした。コシェルとはイスラエルの律法に基づき調理し、料理された食事のことを言います。ですから、肉は完全に血を抜きます。これでは、食通には美味しくないのだそうです。コシェルの肉とそうでない肉との区別は出来ませんでした。

しかし、その後、同じ店に日本人の友人が招待してくれました。彼が選んでくれたのは車エビのオードブルでした。この時は、冷凍でなく、生を使っていることが分かりました。友人の説明では、この主人は近くの寿司屋オーナーと反コシェルの仲間で、新鮮な魚介類を手にしているのだろうとのことでした。ちなみに、エビはタコやイカ、それに豚と同じように、律法では禁じられた、「汚れた」食物です。この店が、昨年、閉店しました。今では、自動販売機を置く、スタンドになっています。

巡礼者であふれていた時、エルサレム旧市街のクリステイアン・クオウターにレストランがオープンしました。その頃は、毎月、聖墳墓修道院で日本語ミサをしていました。終わるのが昼時なので、その都度、食事に呼ばれていました。こんな折り、新装間もないレストランで食事をしたことありました。その後、一度か二度、人を紹介し、入ったことがありました。インテイファダが激しくなり、巡礼者、旅行者が来なくなり、レストランを止め、隣近所と同じ土産物屋に店変えしました。この頃から、店の若旦那は私の姿を見ると声をかけ、何か買わせようとします。そのうち、店を閉めてしまいました。

6月、学校が夏休みになってから、その店前にオレンジ搾りの台を出し、オーナーの下の子が声を出して客寄せするようになりました。私の姿を見るとよってきて腕をつかむ始末です。「後で。」と言ってその場を逃れると、その翌日、「昨日、後でと言った。今日は!」と迫ります。その時、尋ねました。「今日は何杯売れた?」。「2杯」とのことでした。

最近のエルサレムスナップです。