ダビデの町

3月16日

アンジェロ 春山 勝美 神父
Fr.Angelo Haruyama Katsumi, OFM
haruyama@netvision.net.il

エルサレム、今日ころごろのテロリストの決戦場ではなく、ダビデからキリストまでの千年、聖書の舞台についてです。

Tropeon エルサレムはケドロン谷とヒンノン谷に守られた自然の要害の地です。ケドロン谷は、ヘブライ大学のあるモンテスコープスの斜面と神殿の北側から流れくだり、オリーブ山に当たり、神殿の東側とに深い谷を作る2キロ程度の南に下るワデイです。他方、ヒンノン谷はヤッホ交差点辺りから始まり、現城壁西側に沿って南に流れ、シオン山を巻き込んで東に下る1キロ半ぐらいのワデイです。このケドロン谷とヒンノン谷の合流するところに、神殿の西側(現西の壁)から始まるトロペオン谷が南南東に流れ下り、合流します。(写真:Tropeon)。「ダビデの町」はトロペオンの谷とケドロン谷の稜線上にあります。(写真:City)。

City真の左側の自動車道がトロペオンの谷筋で、右側の舗装した道が稜線です。ケドロン谷はこの右になります。また、この辺りが「王家の園」で、その昔、エルサレムはバビロン王ネブカドネツアルの3年に及ぶ包囲に力尽き、セデキア王が夜陰に乗じて都落ちしたのが、このところにあった門からでした。(列王記下25.1-7)。また、イエスが「生まれつき目が見えないのは、誰が罪を犯したからですか」と問題を持ちかけられ、「・・・唾で土をこねてその人の目にお塗りになった。」そして、「シロアム『使わされた者』・・・の池に行って洗いなさい」と仰せになったシロアムの池はこの地にあります(ヨハネ9.1ss)。「写真:Tropeon」の中央左下のモスクが現シロアムの池です。

ここはエブス人の難攻不落の町でした。ヨシュアの時代からダビデの時まで、イスラエル人は攻略することが出来ませんでした。ダビデが攻め込んできたとき、エブス人は「お前はここに入れまい。目の見えない者、足の悪い者でも、お前を追い払うことは容易だ。」と馬鹿にしました(サムエル記下5.6;歴代誌上11.4-9;エレミア52.4ss)。ダビデは「真っ先にエブス人を撃ち倒した者が頭となり、将軍となる」と褒賞を約束しました。ヨアブは「ギホンの泉」の水汲み場に通しるトンネルから町に入り、町を占拠し、軍の将軍となりました。(写真:Gihon)。

ギホンの泉は、これまで、どんな日照りの年でも涸れたことがないと言われています。年老いたダビデ王が、祭司ツァドク、預言者ナタンらに命じ、この泉の傍らで、息子ソロモンに油を注がせて、後継者としました(列王記上1.32ss)。ダビデの意図は貯水池と違って、涸れることの無い泉の神秘に、ソロモンの治世とそれに続く自分の王朝の永続性を賭けたのかもしれません。さらに、この泉から、エレミアの預言を味わうことも出来ます。「まことに、わが民は二つの悪を行った。生ける水の源である私を捨てて、無用な水溜を掘った。水をためることの出来ない、こわれた水溜めを(エレミア2.13)。」

「ダビデの町」は神殿と共に、巡礼者に歌い継がれました。「主の家に行こう、と人々が言ったとき、私はうれしかった。・・・・・エルサレム、都として建てられた町。そこに、すべては結び合い、そこに、すべての部族、主の部族は上ってくる。・・・・・(詩122編)。」また、神は預言者たちの口を通して、「おとめシオン」、「わたしのもの(エゼキエル16.8)」、「主の王座」とも呼ばせています。そのエルサレムが「なにゆえ、独りで座っているのか、人に溢れていたこの都が。やもめとなってしまったのか、多くの民の女王であったこの都が。奴隷となってしまったのか、国々の姫君であったこの都が(エレミア哀歌1.1)。」とエレミア哀歌で歌われるまでになりました。(写真:アリエルの家)。この廃墟から、バビロンが焼き払った都の痕跡が出土しています。(エレミア52.13)。

「まことに、ユダの人々は私の目の前で悪を行った、と主は言われる。私の名によって呼ばれる神殿に、彼らは憎むべきものを置いてこれを汚した。彼らはベン・ヒノムの谷にトフェットの高台を築いて息子、娘を火で焼いた。このようなことを私は命じたこともなく、心に思い浮かべたことも無い。それゆえ、見よ、・・・殺戮の谷と呼ばれる日が来る。・・・この民の死体は空の鳥、野の獣の餌食となる。それを追い払うものもいない。私はユダの町々とエルサレム巷から、喜びの声と祝いの声、花婿の声と花嫁の声を絶つ。この地は廃墟となる(エレミア7.30-34)。」と警告されていました。そして、預言が実現しだのです。

と同時に、同じ預言者から、慰めの言葉をも聞くことが出来ます。「人々はお前を、『追い出されたもの』と呼び『相手にされないシオン』と言っているが。主はこう言われる。見アリエルの家よ、私はヤコブの天幕の繁栄を回復し、その住む所を憐れむ。都は廃墟の丘の上に建てられ、城郭はあるべき姿に再建される。・・・ひとりの指導者が彼らの間から、治めるものが彼らの中から出る。・・・・・そのときには、と主は言われる。わたしはイスラエルのすべての部族の神となり、彼らはわたしの民となる(エレミア30.17-31.1)」。

「写真:アリエルの家」の中央右上の垂直の石垣は、神の約束通り、BC400年、ネヘミヤによって再建された城壁であり、BC160年、マカバイ兄弟たちによって補強された城閣です。